大渓木芸生態博物館は、台湾の木工芸産業の歴史と文化を保存・継承するため、街なかに残る歴史的建造物や街並み全体を博物館と位置づけたものである。そして、この地の日本式官舎群や公共施設が段階的にリノベーションされ、2015年から順次オープンしている。
大渓は、清朝時代から山岳地帯で伐採された木材を河川輸送する水運の拠点として発展してきた。日本統治時代にもその役割を維持し、木工芸産業が発展を遂げた。また、日本による灌漑施設の建設も進み、大渓には多くの日本人が暮らしていた。戦後、蒋介石が公会堂を別荘として利用するなど、台湾の近現代史を象徴する地でもある。木工芸産業で栄えた大渓であったが、鉄道の普及や水運の衰退により活気を失ったことにより、歴史的建築物のリノベーションと観光資源化が進められている。
この博物館は、エコミュージアムのコンセプトを取り入れ、地域と住民が参画していることにも特徴がある。ここで紹介する施設以外に、自らの工房や生活空間を「街角館」として開放し、訪問者に木工技術や日々の生活を体感させてもいる。(訪問年月:2024年11月)
△まち中博物館の全体構成。ほんとに、いろんな建物が博物館を構成しているのが分かる。
△物産小舗。木工芸や地元の特産品を扱う物産館。カフェもある。
△工芸基地。1901 年に建てられ警察職員宿舎として使われた長屋が、地元木工師の拠点に。
△工芸教室。工芸基地にある工芸師による教室の場所。
△鳳飛飛故事館。日本時代に大渓県庁警察署長の官舎と使われた住宅のリノベ。当時生活の歴史が展示されている。
△工芸交流館。日本統治時代に建てられた警察宿舎群の一つで、リノベされ2021年から暮らしの工芸品の展示・交流スペースに。
△一番館。かつての大溪小学校職員寮。全体の中で一番最初にオープンし、博物館全体の情報センター。
△芸師館。日本統治時代の1941年に建てられた独身警察寮が、木工師の物語を収集、展示する施設に。
△六廿四故事館。日本統治時代の 1942 年頃に建てられた大溪農民協会倉庫がリノベされ、この地域のハレとケの展示施設に。
△木生活館。1923年に建てられた木工芸公会堂。木工芸産業と当時の生活を伝える施設に。
△大渓歴史館。 1937 年から 1940 年の間に建てられた警察寮複合施設が、木工芸博物館の常設展示館となっている。
△大渓公会堂。大渓公会堂の洋館で1923年に建てられた。木工芸をテーマにした特別展などが開かれる。
△武徳殿。 1935 年に完成した警察や若者が練習する武道場。
△弾薬庫跡。
△台湾で唯一日本統治時代の面影を残す相撲場。